暖かな日差しに誘われて、窓を少し開けてみました。読みかけの本にしおりを挿み、庭に下りてみました。朝の涼しさを少し残しながら吹く風は、キンモクセイの香りを乗せてきます。
心の奥の引き出しに閉まっていた記憶が、湧き水のように溢れてきます。とまどう心に懐かしさがこみ上げて来て、切なさに涙しました。大学を卒業し希望の会社に就職して社会人となった私。
職場の戦力に成りえたと感じた三年目の夏の日でした。職場での些細な出来事から、人に無視されることの辛さを知りました。泣きたいくらい、死にたいほどの寂しさを私はこのとき初めて知りました。
孤立した私に手を差し延べてくれたのが直属の上司Aでした。私の父の年齢に近い上司Aでした。温厚なその性格とは裏腹に、仕事には妥協を許さない厳しさがありました。この部署の者は皆上司Aに対しては尊敬の念と憧れをもっていました。
私に非があるのを気づかせてくれたのは、上司Aでした。職場での些細な出来事とは、私の仕事への取り組みの傲慢さが原因でした。職場での報連相の基本を無視し一人で突っ走っていた私でした。
このことがきっかけで、何かと相談する私がいました。そしてキャリアを積みながら確実に成長する自分を感じていました。憧れの上司Aに認められ褒められることが、一番の悦びでした。
一年の時が過ぎ、私の気持ちが変化していくのに時間はかかりませんでした。尊敬が憧れに変わり、ふと気づくと一人の男性としてみている私がいました。それがよからぬ妄想へと変わっていきました。
時として、その妄想が就眠を妨げ、自らの身体をもてあそぶことがありました。酷暑の夏もようやく過ぎ去り、空の雲に秋のけはいを感じはじめた10月。上司Aの転勤を知りました。本社への栄転でした。
恩返しも出来ないままの別れに、涙してなき疲れて眠る夜もありました。残り少ない時間のなか、便箋三枚に上司Aに対する思いを書き綴り訴えました。ある週末の夜遅く、アパートのチャイムの音に起されました。
ドアの前に立っていたのは、上司Aでした。ジャージ姿の私、化粧を落としたスッピンの私。彼が来てくれたことの喜びに舞い上がってしまいました。お土産のショートケーキとコーヒを囲んで話をしました。
あらためて、本社への栄転と今までご指導いただいたお礼を伝えました。彼の変わらないやさしい眼差しにほっとする私がいました。話す言葉が見つからないまま、沈黙の谷間に静かに時が流れていました。
心地よい空気の流れの中に、彼の胸元にそっと顔を埋めると何も言わずに抱きしめてくれました。まるで壊れ物を抱くように優しく抱いてくれました。そっと見つめる私の顔に重なる彼の顔。ためらいながらも唇を重ねてしまう私。
彼の温かい息が私の唇に流れ込むと同時に、絡みついてくる舌に戸惑う私。誘い込むような舌の動きに呼応するように激しく絡み合う舌。彼の離れていく舌に、後追いするように誘い込まれる私の舌。
絡み合う二人の舌から湧き出る唾液は糸を引くように交じり合っていく。吐く息がひどく乱れ、全身の力が抜けていきます。今まで経験したことのない身体の火照りに戸惑う私がいました。
触れ合うことの悦びと彼の温もりに、知らず知らずの間に涙が溢れてきました。私の頭では理解できないままに、心と体を充分満たしてくれました。ジャージがたくし上げられ、指先が乳房へそして乳首へとゆっくり走り込んできます。
私の全身を駆け巡る彼の指先は、まるで私の快感のツボを押し当てるかのような魔法の指先でした。めくるめく快感に押し流されながら気がつくと全裸にされていました。
腕の中、彼と視線が触れ合い、思わず背中に両腕をまわしてただうなずく私。目を閉じて、全身で受け入れました。悦びの声を漏らしながら、彼の動きを体内奥深く感じてもがいていました。やがて今まで味わったことのない気持ちよさに引きずり込まれていきました。
本当に死ぬほどに気持ちよかったのです。私を見つめる瞳に言葉が出ず、ひたすら哀願する私がいました。私の願いを察したかのように、無言のまま頷いた彼。徐々に激しくなる動きに翻弄されながらも、彼のすべてを受け入れようと必死に肩にしがみ付き爪をたてる私。
激しく打ち寄せる腰に、波立たせながら奥深く向かいいれようとする私。ついにからだの中心の奥深くに、彼の熱いほとばしりを生で感じながら、体の震えが止まりませんでした。身も心も完全に支配された幸せのなかで意識が遠のいていきました。
どれだけの時間が過ぎたのか、気がつくとベットには私一人。現実と夢の狭間で、体の奥から一筋流れ落ちてきたほとばしりが夢ではなかったことを知らしめてくれました。
一人慰みによる快感はなんだったでしょうか?私は過去数人の男性経験にはそれなりのSEXの快感はありました。でもこれらの快感は彼との交わりにより、根底からくつがえされました。
どんなに熟練されたテクニックより、愛という気持ちのこもったSEXに勝るものはありません。それを教えてくれたのは最愛の彼でした。その後何人かの方とおつきあいをしましたが、あのときに勝る快感にはめぐり合うことは出来ませんでした。
ただこれだけのことなのに、この年になっても涙するのは何故でしょうか?不思議な涙でしたが、枯れた心に若き日のひとこまがキンモクセイの香りにのせられて蘇った一日でした。
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心の奥の引き出しに閉まっていた記憶が、湧き水のように溢れてきます。とまどう心に懐かしさがこみ上げて来て、切なさに涙しました。大学を卒業し希望の会社に就職して社会人となった私。
職場の戦力に成りえたと感じた三年目の夏の日でした。職場での些細な出来事から、人に無視されることの辛さを知りました。泣きたいくらい、死にたいほどの寂しさを私はこのとき初めて知りました。
孤立した私に手を差し延べてくれたのが直属の上司Aでした。私の父の年齢に近い上司Aでした。温厚なその性格とは裏腹に、仕事には妥協を許さない厳しさがありました。この部署の者は皆上司Aに対しては尊敬の念と憧れをもっていました。
私に非があるのを気づかせてくれたのは、上司Aでした。職場での些細な出来事とは、私の仕事への取り組みの傲慢さが原因でした。職場での報連相の基本を無視し一人で突っ走っていた私でした。
このことがきっかけで、何かと相談する私がいました。そしてキャリアを積みながら確実に成長する自分を感じていました。憧れの上司Aに認められ褒められることが、一番の悦びでした。
一年の時が過ぎ、私の気持ちが変化していくのに時間はかかりませんでした。尊敬が憧れに変わり、ふと気づくと一人の男性としてみている私がいました。それがよからぬ妄想へと変わっていきました。
時として、その妄想が就眠を妨げ、自らの身体をもてあそぶことがありました。酷暑の夏もようやく過ぎ去り、空の雲に秋のけはいを感じはじめた10月。上司Aの転勤を知りました。本社への栄転でした。
恩返しも出来ないままの別れに、涙してなき疲れて眠る夜もありました。残り少ない時間のなか、便箋三枚に上司Aに対する思いを書き綴り訴えました。ある週末の夜遅く、アパートのチャイムの音に起されました。
ドアの前に立っていたのは、上司Aでした。ジャージ姿の私、化粧を落としたスッピンの私。彼が来てくれたことの喜びに舞い上がってしまいました。お土産のショートケーキとコーヒを囲んで話をしました。
あらためて、本社への栄転と今までご指導いただいたお礼を伝えました。彼の変わらないやさしい眼差しにほっとする私がいました。話す言葉が見つからないまま、沈黙の谷間に静かに時が流れていました。
心地よい空気の流れの中に、彼の胸元にそっと顔を埋めると何も言わずに抱きしめてくれました。まるで壊れ物を抱くように優しく抱いてくれました。そっと見つめる私の顔に重なる彼の顔。ためらいながらも唇を重ねてしまう私。
彼の温かい息が私の唇に流れ込むと同時に、絡みついてくる舌に戸惑う私。誘い込むような舌の動きに呼応するように激しく絡み合う舌。彼の離れていく舌に、後追いするように誘い込まれる私の舌。
絡み合う二人の舌から湧き出る唾液は糸を引くように交じり合っていく。吐く息がひどく乱れ、全身の力が抜けていきます。今まで経験したことのない身体の火照りに戸惑う私がいました。
触れ合うことの悦びと彼の温もりに、知らず知らずの間に涙が溢れてきました。私の頭では理解できないままに、心と体を充分満たしてくれました。ジャージがたくし上げられ、指先が乳房へそして乳首へとゆっくり走り込んできます。
私の全身を駆け巡る彼の指先は、まるで私の快感のツボを押し当てるかのような魔法の指先でした。めくるめく快感に押し流されながら気がつくと全裸にされていました。
腕の中、彼と視線が触れ合い、思わず背中に両腕をまわしてただうなずく私。目を閉じて、全身で受け入れました。悦びの声を漏らしながら、彼の動きを体内奥深く感じてもがいていました。やがて今まで味わったことのない気持ちよさに引きずり込まれていきました。
本当に死ぬほどに気持ちよかったのです。私を見つめる瞳に言葉が出ず、ひたすら哀願する私がいました。私の願いを察したかのように、無言のまま頷いた彼。徐々に激しくなる動きに翻弄されながらも、彼のすべてを受け入れようと必死に肩にしがみ付き爪をたてる私。
激しく打ち寄せる腰に、波立たせながら奥深く向かいいれようとする私。ついにからだの中心の奥深くに、彼の熱いほとばしりを生で感じながら、体の震えが止まりませんでした。身も心も完全に支配された幸せのなかで意識が遠のいていきました。
どれだけの時間が過ぎたのか、気がつくとベットには私一人。現実と夢の狭間で、体の奥から一筋流れ落ちてきたほとばしりが夢ではなかったことを知らしめてくれました。
一人慰みによる快感はなんだったでしょうか?私は過去数人の男性経験にはそれなりのSEXの快感はありました。でもこれらの快感は彼との交わりにより、根底からくつがえされました。
どんなに熟練されたテクニックより、愛という気持ちのこもったSEXに勝るものはありません。それを教えてくれたのは最愛の彼でした。その後何人かの方とおつきあいをしましたが、あのときに勝る快感にはめぐり合うことは出来ませんでした。
ただこれだけのことなのに、この年になっても涙するのは何故でしょうか?不思議な涙でしたが、枯れた心に若き日のひとこまがキンモクセイの香りにのせられて蘇った一日でした。
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最終更新日 : 2020-09-23